【小説】マルドゥック・スクランブル | 本を片手に街に出よう

【小説】マルドゥック・スクランブル



冲方 丁
マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 | マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼 | マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気

 久々のSF小説。
 なかなか面白かったです。

 GONZOがアニメ化を企んで中止になったりしてたので気にはなっていたのですが、ちょっとオタクっぽい表紙に臆することなく購入し正解。

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内容(「BOOK」データベースより)
 なぜ、私なの?―賭博師シェルの奸計により、少女娼婦バロットの叫びは爆炎のなかに消えた。瀕死の彼女を救ったのは、委任事件担当官にしてネズミ型万能兵器のウフコックだった。高度な電子干渉能力を得て蘇生したバロットはシェルの犯罪を追うが、その眼前に敵方の担当官ボイルドが立ち塞がる。それは、かつてウフコックを濫用し、殺戮のかぎりを尽くした男だった…弾丸のごとき激情が炸裂するシリーズ全3巻発動。
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 舞台は近未来?のアメリカの架空都市だということだけど、

 カーナビから服から銃まで、何にでも変形する超万能兵器(=ウフコック)が出てくる割には、ドルの貨幣価値がだいたい今と同じくらいの感じだったり(100万ドルチップでカジノどよめく)、

 重力コントロールまでやっちゃう割にはレーザーガンは実用化されてそうもなかったり(相変わらず鉛玉の撃ちあいだし)、

 いろいろ気になるところはあれど、適度にスピード感を保ったまま、舞台とキャラを変えながらめくるめくSFテイストをかもし出し続けるストーリー展開と、主人公バロットとウフコック、ひいては悪役シェルやボイルドまでもが織り成す心の葛藤のきめ細かい描写で、一気に読破。

 巷で絶賛のカジノシーンも確かに秀逸。断続的な小波で盛り上げつつ、ここ!という場面でとんでもない大波を仕掛けて、読者の心臓をえぐります。

 ギャンブルものでは、「カイジ―賭博黙示録」なんかが結構スゲーな!と思っていたのですが、趣は違えど、文章でここまでやったのはすごい。

 特にブラックジャックでディーラーのシャッフル操作を見切って、10点札スプリット連発の包囲には王道的盛り上げセンスを感じる。これがカイジだったらディーラーはショックのあまり、グニャー!とゆがんで、なみだ目になってるね。絶対。

 2巻と3巻にまたがるこのギャンブルシーンが目立ちすぎるので一瞬SFだってことを忘れそうになるが、さりげなく随所にガジェットはばらまかれているので、SFファンとしてもそれなりに楽しく読み進められることうけあい。

 買いですね。アニメじゃなくて、ハリウッド映画にならないかな。


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