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 ブラッド・ピットが出てるからエンターテイメントでしょ?でもなんかサスペンスもの?みたいなミーハーなノリで観に行くなかれ。

 「21グラム」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作。てゆうか、基本パターンは一緒です!

 モロッコを旅する米国人夫婦、サンディエゴでその夫婦の子供を預かるメキシコ人家政婦、そして米国人妻を偶然撃ってしまうモロッコの羊飼いの少年、そしてその銃をモロッコ人に渡した日本人は妻をなくした男、聾唖の一人娘とは心を通じ合えていない。

 日本公開版だからなのか、ブラッド・ピットと役所広司や菊地凛子がデカデカとしたポスターだけど、実際、カラミはありません。基本的に別々のロケーションは独立したエピソードとして展開する。特に日本編は他のシーンとほとんど絡まず。

 で、話題のキャストはこんな感じ。

ブラッド・ピット:介抱夫。この人相変わらずこういう癖のある映画に出るのがスキだね~。くたびれ度合の絶妙さはキャラなのか、地なのか?電話のシーンは、シナリオのつなげ方の妙もあるが、演技もうまい。ちょっとだけ泣かせます。

ケイト・ブランシェット:撃たれ妻。正直演技は撃たれるまでの短い間です。本人は当初セリフが少なすぎたのか、やんわりとお断りモードだったそうですが、出て良かったんじゃないかなあ?ピットを相手に、序盤以降は殆んど倒れて介抱されているだけですが、存在感はあります。

ガエル・ガルシア・ベルナル:いや~陽気なメキシカン。こういうひと、いそうだな~!と感じさせるってコトはジャストフィットなキャスティングなんでしょうきっと。陽気な彼が真顔になるメキシコ・アメリカ国境でのやりとりが、中米の現実感をつきつけます。

アドリアナ・バラッザ:家政婦は見た!息子の結婚式という晴の日にとんでもない事態に巻き込まれることに。そつのない演技です。

役所広司:抑鬱独り身男。妻を亡くし、聾唖の娘との間の壁をなくせない。閉塞感たっぷりの中年男の表情の演技は絶妙。ただしセリフは意図的になのか?棒読でわざとらしい。

二階堂智:役所広司の影であまり話題にのぼらないが重要な役どころ。佇いも渋いし、演技も渋い。意外な発見でした。

菊地凛子:日本編の主役です。ヌードシーンなど結構そういうところに話題が集中しがちだが、アカデミー賞ノミネートだけあって表現力はすばらしい。今後に注目。得てして、セリフのあるフツーの役がかすんでしまったりするんだな、最初にこういうスゴイのやっちゃうと。

モロッコの人たち:公開情報だと役者の名前すら出てきませんが、けっこう出番も多いし印象的な演技をする人たちです。最初アフガニスタンだと思ってました。


 全編通じて、要するにコミュニケーションがうまくできないというのは本当に不幸である、というテーマ。

 銃弾がもたらす不幸のみならず、全てのエピソードにコミュニケーションのちぐはぐさがビルトインされており、チクチクと絶え間ない感じで、心に刺さります。

 イタイ。イタイよ2時間ずっと。

 よく、日本編だけ関連が薄く、娘が聾唖である必然性もよくワカラン!という意見などがありますが、この映画を1つの物語として観ようとすると、そういう感想が出るのも確か。

 でも、あくまでこの映画が表現しているのは、言葉がバラバラであるが故、人々のコミュニケーションがバラバラになり、不幸が不幸を呼ぶ(でもそうした不幸や言葉の壁をなんとか乗り越えて、理解しあえることもあるよ)、ってことなんでしょう。
 聾唖ってのも、言葉が通じないという状態の1シチュエーションとしてとらえてください、という感じか。

 エンターテイメント派はきっとNG。クラッシュや、トラフィック、シリアナなどが好きなひとは好きになれると思います。ちなみにわたしはシリアナのラストシーン、ジョージ・クルーニーの必死さと哀しみがごちゃまぜになった一瞬の表情が最高に好きです。


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